30分、一律500円。
ちょっとうれしい、ちょっと助かる、ワンコインWORK。

「夏の時期って、草の伸びがハンパないですよ、
刈っても刈っても、ですから(笑)。
スタッフに熱中症で倒れられたら、今度は配達とか
本業に支障が出ちゃうんで、調整しながら行いました。」
依頼されたら伸び放題の草を、草刈り機で刈る。
手で刈る場合も、もちろんある。

また別件では、「伸び放題の枝をカットして欲しい」とのご依頼。
「マイ高枝バサミ」を自宅から持ってきて、現場に出向し、
スパッと枝を落として、ものの30分で完了。
これをサクサクとやり遂げるのも、ほとんどが女性スタッフというから驚きだ。
「今度の依頼は、庭の樹木カット。
ついにチェーンソーが登場です(笑)。」


これは決して、「便利屋さん」でも、「なんでも屋さん」でもない。
読売新聞を配達する、「新聞販売店」が提供する新サービスだ。
対象エリアの60歳以上の新聞購読者様に向け、ちょっとした家事レベルの依頼を
30分500円という格安料金で引き受ける。
その名を、「まごころサポート」サービスという。

しかもこの募集、メインは正社員での雇用になる。
(パート・アルバイトでも募集中)
主に今は日勤の女性が中心で活躍しているが、
月収としてはスタートが23万円。
ただ、朝刊など、通常の新聞配達・集金なども出来る場合は
月収スタート25万円の金額設定も用意しているそうだ。

 

「新聞屋さんでそんなサービス始めたの!?」

ここで、「まごころサポート」のメニューの一部をご紹介しよう。
特に決められたメニューは存在しない。
依頼のあったサポートに、出来る範囲で答えていくスタンスらしい。
●お庭のお掃除(草むしり、草刈)
●重たい家具の移動、お部屋の模様替え
●高いところの電球交換
●入院中、旅行中のお花の水やり
●重たいもの等の買い出し
●代行でのゴミだし
●ハウスクリーニング
などなど…、とってもユニークなメニューの数々。

〈Before〉
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〈After〉

 

もともとの発祥は、関西のとある新聞販売店からスタートした。
この「まごころサポート」は、2013年12月から全国に広がり始め、
1年で210エリアに拡大、
年を経るごとに益々増える傾向にあるそうだ。
このシステムを栃木で初めて導入したのは、読売新聞を販売し、
YC雀の宮西部・雀宮・宇都宮駅南の3店舗を運営する
所長の鈴木さん。
今まで聞いたことがない斬新なビジネスではあるが、
鈴木所長が統括するこの販売店では、
そもそもが他では類を見ない新しい試みを、積極的に取り入れてきた。
「読者さんが何をしたら、喜んでくれるかというのを常に考えています。
対象エリアの読者さんに向けて、名画の無料上映会を実施したり、
地域と人との関わりを、より強固で血が通ったものにして行きたいんですよ。」

エアコン

「明日の朝刊から来れる?」

よくある新聞販売店とは、ひと味もふた味も趣向が違う。
ちょっと珍しい新聞屋さんだ。
そんな販売店で今年で勤続4年目になる、落合さん。
ヘルシーな笑顔が印象的な、女性店長だ。
特技は枝切り(所長談)。
「もともと社会人ソフトボールを10年ほどやってたんですが、
福利厚生の充実度と、会社母体がしっかりしている
会社の条件に惹かれて、まず面接に来ました。」

「じゃ、明日の朝刊から来れる?」
面接をしながら、ものの数分で、鈴木所長から一言。
「えー?!って面食らいながらも、『来れます』と(笑)」。
一気に採用が決まり、半日後には朝刊配達の仕事からスタートした。

「正直、新聞配って、チラシを折り込んで…とか、
どっちかというとそんな地味なイメージしかないですよね、
新聞屋さんって。でもここの販売店は、、
180度違って、驚くことばかりでした。」
まず、所長がユニーク。
そして何よりも、ここまで地域に密着し、なおかつ
人との温かいふれあいがある内容とは、
思いもよらなかったそうだ。

 

 

「お客様のご自宅でご飯をごちそうになったり、
野菜や果物のおすそ分けも頻繁にあって、
こんなに密度の高い、温かいふれあいがあるとは
全く想像もしていませんでした。」
落合さんの人徳、とも思えるが、
ご近所づきあいが希薄になり、ともすれば
なくなりつつもある現代においては、めずらしいコミュニケーションが存在していた。
「最も忘れられないエピソードは?」
との質問には「ありすぎて、絞れない」と言われてしまった。
それほどまで、温かいつながりが無数にあるようだ。
「私の担当エリアが代わる時も、泣いて別れを
惜しんでくれたお客さんがたくさんいて…有難い話です。」

 

エリアの中にお客様は、何万世帯とある。
出会いは無数だ。
それを大変だとマイナスに捉えるか、
この先の出会いの数にワクワクするか、
捉え方で全く変わってくる。
出会いがあって、人のハートに触れた分、成長がある。
「この仕事の一番の良さですね。」

 


生まれも育ちも、新聞屋だった。

所長の鈴木さんは、もともとが新聞販売店育ち。
夜中に新聞を揃える「トントン」という音、インクの臭いは、
物心ついた頃からいつも隣り合わせだった。
「新聞という媒体のニーズや役割は、時代と共に少しずつ変わってきましたが、
僕にとっては、先祖代々からの稼業があって、今があります。」

雀の宮西部を所長として任されたある日、
祖父の代からの読者から、一本の電話があった。
近隣に住む、歴史愛好家の方からだった。
「祖父は昔、雀宮の歴史についてある仮説を立て綴っていく
随想型タイプの新聞記事を発行していました。
お電話をくださった歴史好きの方が、
その時の発行紙『ふれあい』を
一束持ってきてくださったんです。
発刊第一号目から、きちんと保管してくださっていて、
祖父が新聞屋の所長として、確かに生きていた証のような発行紙でしたから、
亡くなった祖父からの『頑張れよ』というメッセージのような気がしましたね。」

ふれあい新聞

 

この土地に息づいて、根を下ろしていた祖父の仕事を
垣間見るような、象徴的な出来事だった。
そこには確かに、「広く伝える」メディア手段としての、
新聞の役割があった。
祖父が発行していた『ふれあい』は、鈴木所長の宝物として、
今でも大切に保管されている。

 

説明

 

「祖父の遺志を継いで、という意味合いでもないんですが、
地域の読者の皆さんともっと繋がるために、
僕自身も取材形式のミニ新聞発行を始めました。
近隣エリアの注目の会社やお店など、取材させていただき
ちょっとした記事としてご紹介する、
ミニタウン紙みたいなものを継続してお配りしています。
取材ができて、原稿を起こせるスタッフさんも、随時募集しています。」

その他、年2回、3世代に渡る読者さん対象の
「映画上映会」なども好評企画として続行している。

 


暗い、キツい、
マイナスのイメージを打破したい。

 

とはいうものの、最初からうまく軌道に乗っていたわけではない。

ここまでユニークなサービスを取り入れようとした
新聞販売店だが、ここに行きつくまでは
たくさんの試行錯誤と、所長自身の葛藤があった。
「所長になりたての頃は、けっこうもがいていたんですよ。
なんていうか、その頃は読者さんとの関係性も
『モノ』で繋がってるだけでした…。」
購読契約を条件に手渡す、プレゼント商品。
「何をあげるかで決まるつながりだったので、ギスギスしていたと思います。」
商品ありきの商売で、次は何を持っていけばいいかの連鎖に、
鈴木所長は思い悩んだ。
まるでいたちごっこのようだった。
そうこうしているうちに、消費税の増税
さらに大打撃となる大震災が起こった。
「モノでしか繋がっていないことが、心底イヤになってきた時期でした。
歴史があって、長年のお付き合いの読者さんがたくさんいるのに、
愛着のあるこの地域を逆に傷つけているような…
そんなジレンマを抱えていたんです。」

新聞販売店が持つマイナスイメージを打破したいと、
強い信念を持ち始めたのもこの時期だった。
新聞メディア自体が持つ歴史や、社会的役割。
それと真逆のような商法戦略や苦情の多さ…
「そこを変えたい、と強く思ったんです。
例えばいずれ、小中高校生が就職先を希望する時に、
候補の一つとして頭をかすめてもいいレベルの
そんな職場になることが理想なんです。」

 


出会った瞬間にピンとくる人。

同時に、志を同じくしつつ、
喜んで地域のために、
共に働ける社員を増やしていきたい、と思った。
「新聞を配らせてもらっていると、自然と顔なじみになる。
それから、ちょっと立ち話をしたり、
おすそ分けを頂くような場面もあったりしていくうちに
生活の中でのほんのちょっとした困りごとがあることに
気が付いたんです。
それを気兼ねなく頼める、っていうのが
安心できる互いのお付き合いにもつながるし、
自分たちにとっても意味があることなんですよ。」

地域の読者さんとはもちろん、
社員たち、人とのつながりを
一番重視する鈴木所長らしい決断だった。

「人が全てですから、
電話口の声ひとつ、
感じ取れる部分を大切にしていきたい。
今いるスタッフはみんな、
僕が最初に出会って、『ピン』と来た方たちばかりです(笑)。」
同じ職場のスタッフ同士の調和、志の合う仲間たちとの連携が、
仕事においてもいい循環を生んでいく。
「草取りひとつしてても、楽しいんですよ。
新聞屋の仕事って、新聞配るだけじゃないんで、
それは僕も含め、今いるスタッフたちみんなにも
新しい価値観を学べるものだったと思います。」




喜ばれすぎて、驚いた。

「まごころサポート」をスタートするにあたって、
社員間で躊躇や反対意見、葛藤はなかったのか
落合さんに聞いてみた。
「時間が足りなくなったり、中途半端になるのでは?と
思ったし、朝刊から夕刊までのシフト組みが
できるのか迷いがありましたが、
明らかに喜んでもらえるサービスだと、
日頃の肌感覚で分かってはいたんで、
どこまでできるのか、挑戦してみたいなと思いました。」
実務にそこまで支障が出ないように、
うまく役割分担をし、行ける人で行けるように
仕事を割り当てた。
例えば女性スタッフが午前中、「まごころ」の業務を行い
その間、男性には集金や配達をやってもらった。

 

まごころ

「やってみると、ここまで喜ばれるのかとびっくりしました。
夏の時期にグリーンカーテンを作りたい、との依頼があったんですが
フックを壁に取り付けただけで、めちゃくちゃ喜ばれました(笑)。」
雨どいの隙間にたまるゴミの掃除、
定番の草むしり、高いところの電球交換、灯油の買い出し。
家族にも頼みづらいこと、遠慮しがちな小さな仕事は
1回訪問すると、
「次はこれやってほしい」「あれやってほしい」と
次から次にオファーが来た。



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「プロの業者ほど、完璧に上手くはできませんよ、
というのが大前提なんですけどね。
それでもこれだけ喜んでいただけるんであれば、
こちらも喜んでお引き受けしますよ、という感じです。」
プロには頼むほどではない、
なかなか来てくれない、費用がかさむ…
それらをすべて、「まごころサポート」スタッフがササっと解決してくれる。
キャッチコピーにもある、

『ちょっとうれしい、ちょっと助かる を形に』

とは、まさにこのサービスを言い当てている。
背景には現代社会の家庭事情や、時代の流れも垣間見れる。
娘や息子世代は働きに出てしまって、
頼みづらいこともある。
核家族化が当たり前になってしまい、
高齢者だけの家庭、また一人暮らしも増えている。
若い人にとってはなんでもないことも、
シニアになると難しいことがたくさんある。


 

また、新聞の購読者層も年々、高齢化している。
数十年という単位で新聞を購読してくださった地域の方への
恩返しという意味合いもある。
地域の「コンシェルジュ」のような役割だ。

直接触れ合う機会が増えたから、感謝ややりがいを、
よりダイレクトに感じられるようになったことが、一番大きな収穫だった。
いただく対価はワンコイン、
それ以上に「働く価値」を見いだせたことが、
大きな自信に繋がっていった。

「これからは、ちょっとしたサプライズサービスでもやってみたいとか思うんです。
着ぐるみを来てお届け物をする、とか(笑)。
どれだけでもアイディアは出てくるはずですよね。」

 

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新しいアイディアにも果敢に挑戦する、
柔軟で、懐の厚い職場。

社員の皆さんに、鈴木所長ついて聞いてみた。
●厳しさと優しさがある
●頭から怒られたことはない
そして皆さん口を揃えて
「従業員の言葉を聞いてくれる」、そうだ。
同じ目線で提案を聞いてくれ、新しい試みにも躊躇がない。
「やってみて気づくこともあるから、やってみよう」と背中を押してくれる。
笑顔で提案を聞いてくれる。
まず人を大切にする、そんな所長のスタンスが
職場全体を支えているようだ。
配達や集金、営業面においても
けっして、「数字」だけで判断したり、評価することはない。
その中間のプロセスも、しっかり見てくれ、聞いてくれる。
時には評価もしてくれる。
「どれだけフォローが出来ているかも
お客様とのふれあいの中で、ちゃんと評価してくれます。」

この職場は20代~30代を中心に運営されており、
女性もハツラツと働いている。
男女比でいうと6:4で、女性の方が多い珍しい販売店だ。
取材中もひっきりなしに、読者さんがやってきて、
支払いをして行ったり、プラン変更の手続きをしたり、
「これを見た、あれを見た」とやって来る。
「いったん新聞をストップしたい」「改めて頼みたい」など
ご要望はさまざま。
まさに「地域密着型のメディアステーション」の役割となっている。
社員の小学生の息子さんもたまたま居合わせて、
スタッフ達とじゃれあいつつ、
家族ぐるみのような慣れ親しんだ関係性で運営されている。
だからこそ、共同作業の「まごころサポート」も
楽しみながら、うまく運営できている。

最近新しく実行できた職場の改善策についても
落合さんが教えてくれた。
「ひと月のお休みが、なんと今までよりも2日も増えたんです。
それを可能にしたのは、所長がシフトを組み替えてくれたから。
正直、まだ小学生くらいの子供がいるスタッフも多いから、
そんな計らいがホントに嬉しかったのが事実。
常に改革することに前向に取り組んでくれるので
有難いですね。」



社員ひとりひとりの、特技が集まれば…


このサービスを始めてもう一つ良かったことについて、
鈴木所長がこんな話をしてくれた。

「いつも顔を突き合わせている職場のスタッフ一人一人に、
こんな特技があったんだ!と
新しい一面を知ることができたのも、これがきっかけなんですよ。
例えば、事務処理専門の事務員さんが、
プロ級(?)のスピードで草むしりがうまくて、早くて
スタッフが誰もかなわないとか(笑)、
店長の落合なんか、僕よりも全然、
枝を切るスピードが速いですからね。」

「いろんな特技を持ってる人が多いって
職場の強みですよね。
このサービスをしなかったら、そんな一面に出会うこともなかったんだろうし…
人って本当に面白くて、可能性があるなぁと、
感心したんですよ。」

栃木発(初!)のニュータイプWORK、
「まごころサポートサービス」のこれからのビジョンとしては、
研修を受けたり、資格取得などを行って
技術の向上を図りつつ、よりきめ細かい依頼に
対応できるようになることも視野に入れているそうだ。
「今の段階だと、草刈りや家庭のちょっとした家事に
仕事が集約されてしまっていますが、
これからは『サポートのプロ』ともいえる集団を
形作っても面白いな、と考えています。
この仕事に賛同してくださる方を、
随時募集しています。」

 

集合

各販売店では、その日の新聞を広げて
スタッフ同士で気になる記事についてのミーティングを
そのつど行っている。
みんなで気になる記事を1つ選んで話し合い、
そこで共有した情報を読者様宅での訪問時に役立てたりする。
他にも、ハウスクリーニングの技術習得に励んだり、
これから社会に出ていく子供たちに
きっと役立つ『夢新聞』の活動を始めたり…と、
「新聞」というメディアを通して、
社員やスタッフ自身が「活き活きと輝ける」ような、
運営メニューが一つずつ繋がってきているそうだ。
いくら時代が進化を遂げても、人の暮らしにおいて、
本質として大切なものは変わらないのだと、
地域密着型のこのサポートワークを知れば知るほど、
実感させられる。

「500円を受け取った後に
ありがとう、と何度も言われて
両脇にでっかいスイカ2玉抱えてきたり、
お菓子も袋いっぱいにもらってきたり…
笑顔で帰ってくる社員が増えたことが、
何よりもやってよかったな、と思っています。」